
令和7年 戦後80年という節目を迎え
八王子市は、昭和57年6月29日に「非核平和都市宣言」を行い、恒久平和の実現を願う都市として歩みを続けてきました。 令和7年、戦後80年という節目の年を迎えた本年、市では初めて、広島のアオギリと長崎のクスノキの二世の苗木を市役所広場、富士森公園、市内中学校に植樹し、平和への願いを形にしています。未来を担う子どもたちが、平和の象徴とともに育っていくことを願う取り組みです。 ただ、こうした式典や映像を一度だけ見て、戦争の悲惨さをどこまで実感できるのか―そんな思いも心に浮かびます。空襲の記録や震える子どもたちの姿は、過去の出来事ではありますが、私たちが今の平和をどう守るかを考えるうえで、決して忘れてはならない記憶です。 戦争は、誰もが望まないものです。 それでも、世界には武力を背景に動く現実があります。だから自国の防衛を担うために必要な技術や人材を育成することは、現実的な安全保障の観点からも重要だと考えています。 平和を守るためには、武力に頼らない努力と同時に、万が一に備える責任ある体制づくりも必要だと考えます。 そのバランスをどう保つか。それこそが、今の私たちに問われている課題なのではないでしょうか。 最近では、アメリカのトランプ前大統領がロシアのプーチン大統領との会談を促し、ウクライナに即座の交渉を求める発言をしたことが報じられました。 しかし、ロシアは民間人居住地への攻撃を続け、停戦に応じる姿勢を見せていません。ウクライナも領土や主権を譲ることはできず、対話だけでは解決できない現実がそこにあります。 この状況は、理想としての「対話による平和」が、現実ではいかに困難かを私たちに突きつけています。 武力に頼らないことは重要です。しかし、対話が成立するには、相手が対話を尊重する姿勢を持っていることが前提です。だからこそ、国際社会の連携や法の力、経済的圧力など、非軍事的な手段を強化し、平和を守る努力が求められているのだと思います。 今の日本は平和ですが、だからこそ「平和であること」に慣れすぎてしまっていないか?そんな問いもあります。 平和が続いている今だからこそ、万が一の事態に備える意識も必要だと感じています。 世界の情勢を見ていると、「いつ何が起こるか分からない」という不安が、決して他人事ではないことを思い知らされます。 戦争の恐ろしさを忘れずにいながらも、私自身は、社会の変化や日常に潜む不安について、日々考えさせられています。 それは、戦争への不安を軽視しているのではなく、平和の中に生きる私たちが、何を守り、何を育てていくのか。 その問いを現実の中で考え続けたいという思いからです。 終戦の日にあたり、静かに、平和への思いを新たにしたいと思います。